町田市医師会ホームページ

怠け病と揶揄される頭痛「脳脊髄液漏出症」について

  • HOME »
  • 怠け病と揶揄される頭痛「脳脊髄液漏出症」について

身近な医療情報

怠け病と揶揄(やゆ)される頭痛「脳脊髄液漏出症」について

 突然発症する起立性頭痛、「脳脊髄液漏出症」をご存知ですか。
 頭痛には、片頭痛や緊張性頭痛等、様々な頭痛が存在します。時に頭痛外来診療をしていると特徴的所見を有するこの「脳脊髄液漏出症」に遭遇します。しかも、この頭痛は、鎮痛剤にほぼ反応しない厄介な頭痛です。


 では、どのような原因でこの頭痛を発症するのか、いままでの外来受診の例では、夏休みのアルバイトでプール監視員をしている大学生が、遊泳者を注意するためにホイッスルを吹いた瞬間に発症、園児と遊んでいる保育園の保母さんに、園児が後ろからぶつかってきて発症、お孫さんの運動会の際、おばあちゃんが大声で応援中に突然の発症、など日常の些細な行動で生じます。そして、共通しているのは、起立位で頭痛が増強し、横になると頭痛は急激に回復します。頭痛薬は、ほぼ効きません。従って、本人は、ゴロゴロ横になっていると調子がいいので「怠け病」と周囲から揶揄されるのです。
 この頭痛が原因で学童が不登校になり就学できなくなってしまう例もあります。


 この病態は、脳脊髄液が何らかの原因で硬膜外腔に漏れだしてしまうために生じる頭痛です。起立位は、重力の関係で髄液漏出量が増加するために頭痛がひどくなり、横になると髄液の漏出量が減少するため髄液漏出量のバランスで頭痛は自然に改善するのです。この頭痛には鎮痛剤は効きませんが、末梢より補液をするとやはり髄液量の関係で頭痛は改善し、しばらくは立って動くこともできます。


 髄液漏出が確認できれば、硬膜外腔に自家血を注入するブラッドパッチ治療が奏功します。この治療法は、平成28年4月に保険適応になりました。脳脊髄液循環や脳脊髄液漏出機序についてまだまだ解明されていませんが、治療により劇的に症状がなくなる頭痛でもあり、患者様からはとても感謝される医者冥利につきる治療法でもあります。


すずき脳神経外科クリニック 鈴木 伸一 先生

PAGETOP
Copyright © 町田市医師会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.