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「フレイル」をご存じですか?
フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間段階を指す言葉で、加齢とともに心身の活力が低下し病気などへの抵抗力が弱まり、将来的に介護が必要になるリスクが高まった状態の総称です。フレイルの特徴は以下の通りです。
* 健康と要介護の中間段階: まだ要介護ではないものの、放置すると介護が必要な状態に進むリスクが高い段階です。
* 多面的な問題: 身体的な問題(筋力低下、疲れやすさなど)だけでなく、精神的・心理的な問題(うつ、認知機能の低下など)や社会的な問題(閉じこもり、社会交流の減少、経済的困窮など)も含まれます。
* 可逆性: 適切な対策や予防を行うことで、健康な状態に戻る可能性がある点が重要です。
フレイルの主な症状は、以下のようなものが挙げられます。
* 体重減少(意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少)
* 疲労感(週に3~4日以上何をするのも面倒に感じる)
* 身体活動量の低下(運動習慣や身体活動が減る)
* 握力低下
* 歩行速度の低下
これらの症状のうち、いくつか当てはまる場合はフレイルの可能性が考えられます。
フレイルの原因は多岐にわたりますが、大きくは以下の3つが挙げられます。
* 栄養不足: 食欲低下や咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)機能の衰えなどによる低栄養状態。
* 運動不足: 身体活動量の減少による筋力低下(サルコペニア)や運動器の衰え(ロコモティブシンドローム)。
* 社会参加の不足: 社会とのつながりが希薄になることによる、心身の健康への悪影響。
また、加齢、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)のコントロール不良、薬の影響、口腔機能の低下などもフレイルの要因となります。
フレイルの予防には、以下の4つの柱が重要とされています
* 運動: 筋力維持・強化のための運動習慣(ウォーキング、スクワットなど)。
* 栄養: バランスの取れた食事で、特にたんぱく質をしっかり摂る。
* 口腔(口の健康): 咀嚼・嚥下機能の維持のための口腔ケアや歯科健診。
* 社会とのつながり: 外出や交流の機会を増やし、社会参加を促す。
これらの対策を継続することで、フレイルの進行を防ぎ、健康寿命を延ばすことが期待されます。
参考文献
1) 新井秀典;フレイルの意義. 日本老年医学会雑誌 51:497~501, 2014
2) 葛谷雅文;超高齢社会におけるサルコペニアとフレイル. 日本内科学会誌104:2602~2607, 2015
3) 前田圭介;フレイルの評価方法と最新疫学研究. フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ. 公益財団法人長寿科学振興財団:27~39, 2020
まちだファミリークリニック 小山 俊一 先生
