町田市医師会ホームページ

いつも声がかれている友だちはいませんか?

  • HOME »
  • いつも声がかれている友だちはいませんか?

身近な医療情報

いつも声がかれている友だちはいませんか?

 みなさんの周りには、いつも声がかれている友だちはいませんか?「運動会の応援で声を出しすぎて声がかれた」というような経験はあなたにもあるかもしれませんが、声帯の病気でいつも声がかれた状態になってしまう人もいます。


 医学の専門用語では、声がかれた状態を嗄声(させい)と呼びます。特に小児期にみられる嗄声は「小児嗄声」または「学童期嗄声」と呼ばれています。日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会 学校保健委員会では、小児嗄声を「幼稚園から小学校低学年にかけて多発するもので、無理な発声が習慣となり、声帯に炎症を生じて嗄声を来し、慢性の経過をたどるもの」とされています。小児嗄声は、いわゆる「ハスキーボイス」が特徴です。


小児嗄声のほとんどが「声帯結節(けっせつ)」という病気です(図1)。声帯結節とは、日常的な声の使い過ぎにより、声帯への刺激が持続し、声帯の中央部が腫れる、あるいは部分的に粘膜が厚く、硬くなった状態で、多くの場合、左右の声帯に対称的に発生します。正常の声帯(図2)と比べると、声帯の内側に小さな膨らみができていることがわかると思います。声帯結節は、声帯にできた「ペンだこ」のようなものと考えてもらうと理解しやすいでしょう。声を出すとき、私たちは無意識のうちに左右の声帯を閉じて、息を吐きながら両方の声帯を振動させて発声しています。その時、声帯結節があると、声帯が正しく振動しないためにハスキーな声になってしまいます。小児声帯結節に関する臨床統計によれば、男女比は4対1もしくはそれ以上で、圧倒的に男児に多い疾患です。また、年齢的には7~9歳がピークになります。


 診断は、喉頭鏡や喉頭ファイバースコープを用いて、声帯を観察することで行います。小さいお子さんでは、喉頭鏡での観察が十分には行えないため、通常は喉頭ファイバースコープを用いての観察が必要になります。喉頭ファイバースコープは、胃カメラを細く、小型にしたようなものと考えてください。挿入部の太さは、一般的には3~4ミリで、この太さのスコープはほとんどの医療機関(耳鼻咽喉科)が所有していますが、施設によっては太さ2ミリ程の小児用細径スコープを所有しているところもあります。胃カメラは口から入れることが多いですが、喉頭ファイバースコープは鼻から少しずつのどの奥の方に入れて観察します。鼻の中を通り抜けていくときに多少の違和感があったり、また咽頭反射が強い(のどの奥を触ったときに「オエッ」となりやすい)人では多少の苦痛を伴ったりしますが、通常はそれほど辛くありません。小さな子どもの場合、泣いたり暴れたりして観察が十分にできないこともありますが、小学生以上であればほとんど観察可能です。喉頭ファイバースコープでどうしても観察できない場合は全身麻酔での観察が必要になることもあります。


 治療は、小児声帯結節は声変わりの時期になると自然に治ることが知られているため、原則として手術などの外科的治療よりも経過観察を優先させます。声の衛生環境を守るため、声の使い方に注意をして、声帯に負担をかけない発声をさせるようにします。具体的には「大声を出さない、叫ばない、力んで声を出さない、連続して長時間しゃべらない、奇声を発しない、運動しながら声を出さない」などです。また「腹式呼吸」の訓練によって、正しい発声ができるようにすることも大切です。一方、「音楽の授業で歌えない、本の朗読ができない、友達とのコミュニケーションにも支障がある」などの場合には、全身麻酔で結節を切除する外科的手術を行うこともあります。


 この他に嗄声の原因と考えられる疾患として、声帯やその周辺に腫瘍(しゅよう)ができていたり、声帯を動かす神経が麻痺(まひ)して嗄声が起こっていたりすることもあります。これらの疾患の場合には、小児声帯結節とは治療方法が全く異なりますので、一度近くの耳鼻咽喉科を受診してみてください。



稲垣耳鼻咽喉科・町田市立小・中学校 耳鼻咽喉科校医 稲垣 康治 先生
(「学校保健」2025年10月23日号より転載)

PAGETOP
Copyright © 町田市医師会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.