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ナルコレプシー

 過眠症の代表的な疾病です。2,000~4,000人に1人が罹患し、特に日本人の罹患率が高いといわれています。以前は依存性が高い覚醒剤に似た治療薬しかなく、医師も診断/治療に躊躇していたと思います。しかし思春期に発症する方が多く、まわりからは「怠け者」、「やる気がない」といわれ、自信を喪失されて学業不振や失業に至る方が少なからずおり、日本ナルコレプシー協会は2009年より全国の各中学/高等学校にむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布しました。社会的成長が盛んな時に、疾病により不当な評価を受けてしまう事は避けなければいけません。


ナルコレプシーの主な症状は、


①睡眠発作;日中の授業中や食事中などに、発作的に耐えがたい眠気に襲われて眠り込んでしまいます。生活に大きな支障をきたします。


②情動脱力発作(カタプレキシー);笑ったり、怒ったり、緊張したり、と感情の動き(情動)が誘引となって、「膝の力が抜けて立っていられない」、「握っている物を落とす」、「口がもつれてしゃべにくい」などの脱力発作が数分続きます。これはすべての方には見られませんが、診断の上では重要な症状です。


③睡眠麻痺/入眠時幻覚;入眠直後に目が覚めて、体を動かせず/声も出せなく不安と恐怖が強まる状態を睡眠麻痺といいます(通称は金縛り)。また、やはり入眠直後に「幽霊が立っている」、「体が空中に浮く」などの現実感のある夢を見る事を入眠時幻覚といいます。この2つは伴う事が多く、いずれも入眠直後にレム睡眠が出現するためです。


 ちなみにヒトが入眠するとノンレム睡眠(脳を休ませる睡眠)が深くなり、約90分後にレム睡眠(眠りは浅く夢を見て、体はロックされる)となった後にまた深い睡眠に向います。これを一晩に数回繰り返します。


 ナルコレプシーはレム睡眠が不安定に出現します。日中にレム睡眠が体をロックさせてしまうのがカタプレキシー、入眠直後のレム睡眠が睡眠麻痺/入眠時幻覚を出現させます。ゆえに睡眠が安定せず、日中の睡眠発作を誘発してしまいます。


 『本来なら達成できた社会的成長の目標』が、疾病により損なわれてしまうのは大変に悲しい事で、その方の人生を左右します。ナルコレプシーの確定診断は高次医療機関での精査が必要となり、以前は病態がまだ解明されないゆえに診断に慎重となりすぎて10年以上かかりました。しかし近年は依存性が少ない治療薬もあり、簡易検査から治療に入って徐々に確定診断をしていく思春期の方もいます。また、発達障害を心配して受診される方の中にナルコレプシーを疑う事も少なくありません。


 思春期を中心に診療する精神科医として、いままで睡眠の専門医に任せていたナルコレプシーを診ていく必要性を痛感する最近です。


町田こころのクリニック 中川 種栄 先生

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