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「忘れる」ことは悪いこと?

 “忘れる”から連想することといえば、「物忘れ」「忘れ物」「認知症」などでしょうが、「忘れる」ことは本当に良くないことばかりなのでしょうか。


 脳科学では、記憶についてさまざまな階層や種類を想定しています。そして「忘れる」ことは、①そもそも覚える(記銘)ことができない、②覚えておくこと(保持)や思い出すこと(検索、想起)ができない、に大別されます。


 今回は、心の働きという側面から「忘れる」ことについて説明したいと思います。


 私たちはさまざまなストレスにさらされながら生活していますが、記憶はとても重要な役割を担っています。すなわち快適に生活するためには、適度に覚えておくことと適度に忘れることが必要なのです。


 ひとつ例をあげてみましょう。出産に関わる女性の負担は大変なもので、つわりや出産が大変で、次の妊娠に抵抗を感じる女性は少なくありません。これは、自身に過度なストレスがかかった際に、同じ目に遭わないように自分を保護する働きであり、記憶の重要な一側面です。 


 一方で、こうした体験をしながらも、第二子を出産する女性も多くいます。動機はもちろんそれぞれで、子育てから得られる喜びが出産の苦痛を上回る場合もありますが、ここで重要なことは時間の経過とともに苦痛に満ちた記憶が色あせていくということです。


 これは自分を保護する機能が低下するということではなく、現実に即した形に修正されていくという働きです。このようにストレスに満ちた体験を適度に忘れることが、快適に生活する上ではとても重要です。記憶することだけでなく、忘れることにも同様に自分を守る作用があるのです。


発達心療クリニック 杉村 共英 先生
(「広報まちだ」2015年12月11日号「健康メモ」より転載)

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